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スタッフコラム 股関節

夏休み企画⭐️院長コラム2「これは、股関節周囲の痛み?」

「なんだか足の付け根が痛い…」そう感じたときに、「どこが?どんなふうに?」悪いのか悩む方が多いと聞きます。骨折や打撲など目立つような外傷を除き、股関節周囲のいろいろな痛みの原因についてご紹介します。

股関節治療の詳しい内容はこちら

可能性1:軟骨がすり減ったことによる痛み

股関節周囲にも軟骨がある!

軟骨がすり減ったことによる痛み

「ひざの軟骨」のように、股関節周辺にも軟骨があります。大腿骨頭と骨盤の間に、(関節を)滑らせて動かしたり、クッションの役割をしています。その軟骨が、年齢を重ねることで少しずつ「すり減る」「少なくなる」ことで痛みが発生している可能性があります。代表的な疾患名としては変形性股関節症が考えられます。

こんなときに痛みやすい

基本的に荷重がかかったときに痛みを感じやすいとされています。最初は歩くときに痛みを感じる程度ですが、進行すると痛みを避けるために股関節の可動域が狭くなり、荷重のかからない運動時なども痛みを感じるようになります。

段階に合わせた治療

変形性股関節症だった場合は、進行の段階によって治療内容が異なります。初期段階であれば、体重を増やさないように注意しながら、傷ついた軟骨への負荷を減らすことや可動域制限や筋力低下予防のリハビリを行います。進行した段階になると、関節内の体重のかかる部位を変えるために、骨切り手術を行います。さらに進行した状態であれば、人工関節置換術を行うことになります。

可能性2:関節炎・炎症に伴う痛み

何もしてないけど痛い?!

何もしてないけど痛い

荷重時(歩いたとき)だけではなく、何もしていない安静なときにも痛みを感じる「関節炎・炎症」の可能性があります。この場合は、X線検査を行っても正常だと判断されることも多く、MRI検査で関節内に水が溜まっていたり、滑膜の増殖を認めることで判断できます。代表的な疾患名としては、関節リウマチによる関節炎があります。

こんな場合も…

関節内の軽微な外傷や使い過ぎ(スポーツ選手などのオーバーユース)の事例も多く認められます。この病態には、いわゆる抗炎症剤(痛み止め)の内服や可能な範囲での安静で治療効果があると考えます。もちろん関節リウマチの場合には原疾患に対する治療が重要です。

可能性3:関節周囲の筋肉などの軟部組織の拘縮による痛み

日常生活動作をするだけで痛い?!

靴下を履く

いろいろな疾患や病態に伴って起こる症状だと言われます。痛みが起こるきっかけを無意識のうちに回避してしまい徐々に股関節の可動域が狭くなっている可能性があります。例えば、下のものを拾う・靴下を履く・しゃがむ、などの日常生活動作で痛みを感じるようになります。原因がはっきりしている場合は、その病状と並行しながらリハビリを行い、可動域制限の改善・股関節周囲筋のストレッチを行うことが重要です。

可能性4:FAI症候群による痛み

こんなときに痛みやすい

FAI症候群による痛み

外来で患者さんでこの症状のような痛みを訴えられる方が多くいらっしゃいます。この痛みは、股関節を深く曲げて捻ったときに、骨盤の前と大腿骨がぶつかることで痛みが起こります。可能性1で紹介した、大腿骨頭と骨盤の間にある軟骨のすり減りや関節唇かんせつしんを主とした軟部組織が挟まることによって痛みが繰り返し起こります。歩いたり走っているときは痛みを感じることが少なく、階段昇降や車の乗り降りなどで股関節を深く曲げる動作で痛みを感じるため「カーサイン」などと言われています。

段階に合わせた治療

繰り返し骨盤の前と大腿骨がぶつかる痛みが起こると、最終的には変形性股関節症に進行してしまう可能性があります。そのため、まずは現在の病状を十分に理解して、ぶつかる痛みが起こりやすい動作を回避するように注意した日常生活を心がけながら、リハビリで周囲の筋肉のストレッチや筋力トレーニングを推奨しています。
ただし、明らかな関節唇の断裂の症状を認める場合は、関節唇の縫合手術や切除手術を行います。症状が進行して変形性股関節症の状態になった場合には人工関節置換術を選択する場合があります。

可能性5:股関節に原因のない股関節周囲の痛み

腰の痛みに混ざっている?!

腰の痛みに混ざっている?

腰椎椎間板ヘルニア・坐骨神経痛・腰部脊柱管狭窄症などの腰椎部由来の神経痛に股関節周囲の痛みが混ざり、間違って腰に対する治療を受けている場合が少なからずあります。高齢になるとX線検査やMRI検査を行うと、高い頻度で腰椎疾患(腰椎椎間板ヘルニア・坐骨神経痛・腰部脊柱管狭窄症など)が認められ、股関節疾患が見逃されてしまっていることがあります。
当院では、X線透視下に関節内に浸潤麻酔薬を入れて痛みの改善程度を確認しています。
注射後から数時間経過して痛みが改善していれば、股関節由来の痛みとなります。逆に、全く改善しなければ腰由来の痛みになります。

可能性6:Referred pain(リファードペイン)症候群?!

股関節痛の自覚症状はナシ!膝が痛い?!

膝の痛みが強く、さまざまな検査を行っても原因不明の膝痛として明確な治療が行えないまま長期間経過観察されたものが、実は末期の変形性股関節症だったとういう報告があります。大腿神経の枝の伏在神経神経による関与が報告されています。

医師も頭を柔らかくして…

一概に「股関節周囲の痛み」といっても、本当にさまざまな可能性が考えられます。私たち医師も患者さんが痛みを感じた状況を聞きながら、頭を柔らかくして原因をつきとめ、治療を提供できればと思います。骨折などと違い、股関節周囲の痛みは「病院に行くタイミングがつかめない」と聞きます。早期発見であれば、治療やリハビリは最小限で済むため痛みが長く続いているようであれば、一度お近くの整形外科または当院の整形外科までお越しいただければと思います。