【院長コラム4】変形性股関節症のよもやま話
病院で「変形性股関節症」という怖そうで難しそうな病名を言われ、インターネットで検索すると「手術」や「人工関節」 という言葉に驚く人がいるかもしれません。ですが、「変形性股関節症」であること自体は、そんな恐ろしく厄介な話ではないことを簡単に説明します。
年齢を重ねたら起こりやすい
変形性〇〇関節症は病気?!
まず、「変形性〇〇関節症」という言葉についてですが、加齢変化に伴って関節の軟骨が徐々に減り、(若い頃と比較して)痛みや関節を動かせる範囲が制限される疾患のことを指しています。そのため、病気や病名というよりも「状態」を表現していると考えてもいいと思います。
変形性〇〇関節症は、どの関節にも存在する
この病名は、あらゆる関節で起こる可能性があります。
例えば、膝関節で起こると「変形性膝関節症」となり、指であれば「変形性指関節症」となります。
人間の体には265個の関節がありますが下肢の関節に発症しやすく、特に体重を支える股関節・膝関節が多くなります。そのため、病院で診察を受けると「変形性膝関節症」や「変形性股関節症」と診断される方が増えています。さらに、膝関節と股関節では、圧倒的に「変形性膝関節症」を発症する方が多く、「変形性股関節症」で通院されている方は比較的稀な傾向があります。
変形性股関節症よりも変形性膝関節症が多い理由は、ひと言で解決するのは難しいですが、体重が増え過ぎていることによる膝への負担とは別に、特にはっきりした原因がなくても「加齢」という問題だけで軟骨がすり減り「変形性膝関節症」を発症します。一方で変形性股関節症は、加齢だけでは発症していない傾向が高く、変形性膝関節症と診断される方が多くなっています。
日本人の場合は、生まれつきの股関節の形態異常(臼蓋形成不全や生まれたときの股関節の脱臼など)があると、中年以降に変形性股関節症を発生してくるケースが多いです。もし心配な方は、もし心配な方はご家族に子どもの頃に何か股関節の治療を受けたことがあったか聞く・把握しておくなど、原因を考えてみることも手段のひとつです。
60歳前後・80歳前後のときにご用心!
変形性膝関節症と変形性膝関節症の違いが、もうひとつあります。
私の印象では、股関節は60歳前後、膝関節は80歳前後で手術を決断する方が多く、股関節は中高年層(50〜60代)で症状が増悪し、手術をすることが多いと感じています。ただし、すべてがこのケースに該当するわけではありません。股関節痛・膝関節がある場合、年齢的なことも受診の目安として検討していただければと思います。
徐々に悪化、だからこそ気をつけたいこと
股関節の場合は、長い期間かけて徐々に軟骨が悪くなる病態です。
前股関節症から始まり、「初期股関節症」「進行期股関節症」「末期股関節症」と同じ病名を指摘されても、病期や程度が全く違います。
- 前股関節症は、生まれつき股関節の形態が悪かった名残りはあるけれど、現段階では軟骨は全く傷害されておらず、疼痛や日常生活の制限もほとんどない傾向です。
- 前股関節症から初期股関節症の段階になると、将来の進行を予防するために骨切手術を行うこともあります。
- 進行期股関節症の段階でも、可動域制限はあるものの、痛みを感じない場合も多く存在します。痛みや日常生活の制限がなければ、進行期や末期でも手術は必要ありません。
可動域の制限は、しっかりとリハビリを行うことである程度の改善を期待できます。ほかにも、歩行時の痛みについても、程度の差がありますが股関節周囲の筋力訓練を行うことで軽減が期待できます。
二足歩行の宿命?!
人間は、一生涯二足歩行で歩き続けないといけません。
そのため、すり減り出した軟骨は必ず徐々に進行していきます。あまりにも手術のタイミングを先延ばしにしていると、筋力の低下・変形が強くなるなどの弊害もあります。手術に対する不安については、整形外科医師までご相談いただければと思います。また、近年は医療技術も進歩し、傷口や手術侵襲も小さく・入院期間も短くなるなど、過去とは違っていることも多いです。まずは、リハビリを行いながら定期的な診察と画像検査を行い、変形性〇〇関節症の治療に向き合っていただければと思います。