中高年層を含めた運動学習について
リハビリテーションでは、硬くなった関節を動かす、弱った筋力を回復させる訓練などが多いため「痛い」「しんどい」「辛い」などの印象をもたれると思います。
リハビリテーションの目的に、「できない基本的動作をできるようにする」ことがあります。できなくなった基本的動作やスポーツ動作を反復練習して、正確な運動を学習する「運動学習」が重要になってきます。今回は、若い世代に限らず、中高年層のスポーツ活動の対策を含めた、運動学習についてご紹介します。
「声かけ」が運動学習に
運動学習には脳の視床が関係します。
運動を反復学習する過程で「自分に利益がある」と体感できたことで得られるため、専門的には「報酬系」と言われます。
身近な「報酬系」の例えとして、複数人で取り組むスポーツ活動があります。スポーツの系の部活動や中高年者のレクリエーションスポーツにおいて、自分が取り組んでいるスポーツ動作に対して、監督やコーチ、仲間などからの「声かけ」が「報酬系」の作用として働きます。声をかけられる行為が自身の脳を刺激し、「運動学習」の促進につながっています。
単独のスポーツ活動にもエールを
一方で、マラソンやジョギングなど単独でも行えるスポーツや指導者や仲間がいない環境で取り組まれている場合は、「声かけ」が「報酬系」の作用が少なく、「運動学習」を促進する機会が少ない傾向があります。このような場合、スポーツ活動を中断してリハビリテーションを行う際に、運動学習を促進させていくことが難しいケースが多いと感じます。特に、中高年層になると、コミュニケーションとしての「声かけ」が生活全体として少なくなりやすい傾向も重なってきます。単独で行うスポーツ活動でも、知り合いの方とすれ違うときに挨拶をするなど、簡単な「声かけ」の頻度を増やすことで「声かけ」が「報酬系」の作用につながっていく効果が出てきます。
運動学習の促進に必要なことは…
スポーツ系の部活やスポーツ活動中に響く「がんばれ!」「ナイス!!」などの声援には、正確な運動を学習する「運動学習」を促進させます。励ましの声や何らかの助言が脳にとっては「報酬」なのです。また、スポーツ中のケガなどでリハビリテーションを受けている場合は、リハビリテーション部のスタッフとコミュニケーションをとることが、報酬系を刺激し、運動学習を促進せる可能性があります。スタッフとの会話を含めたリハビリテーションも参考にしてみてください。
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- 参考文献
- 嘉戸直樹, 伊藤正憲. 運動学習はここまでわかった. 関西理学. 8: 49-52, 2008.
- 中村隆一, 齋藤宏ら. 基礎運動学. 第6版. 2003.