10代のスポーツ選手と成長痛
今回は、10代のスポーツ選手が悩まされることが多い下肢の痛み(膝の痛みやかかとの痛み)といわゆる成長痛ついて考えます。
まず、成長期については骨端線(発育期の骨にある成長をつかさどる軟骨層)が残存している時期までと考えると、男子は17〜18歳、女子は15〜16歳くらいまでの時期を平均的な成長期として表します。
痛みの「きっかけ」を考えよう
10代のスポーツ選手が痛みを訴えたときのきっかけを把握します。
- サッカーやラグビー、バスケットボールなどの接触プレーがきっかけで起きた、もしくは接触はなく着地動作や切り返しの動作がきっかけで起きた
- 過度な練習で起きた(オーバーユース)
- 何もしていないが痛みが起きた
「1」の場合は、どうやって痛くなったのか本人や周囲の人が受傷した場面を振り返り、その肢位が原因を判断(把握)する要素になり得ます。
「2」の場合は、過度な負担や慢性的な痛みが起きているものの、本人がオーバーユースに気付かない(判断できない)可能性が考えられるため、周囲の大人が気にかけている必要があります。
成長痛(Growing Pains)とはなにか?
「(いわゆる)成長痛(Growing Pains)(Benign Nocturnal Limb Pains of Childhood)」は、1823年にフランスの医師Duchampが最初に提唱した症候群です。小児の再発する下肢の痛みや不快感を「成長の病気」として説明したことがはじまりとされ、以下のような特徴があるといわれています。
- おおよそ4〜12歳ごろに起こる
ただし成長痛(Growing Pains)のピークは、はっきりしない - 急速な成長時期に必ず症状が出るとも限らない
- 男女による有意差はない
時間帯にも特徴がある?!
(いわゆる)成長痛(Growing Pains)は、起こりやすい時間帯があり、古典的には夕方から夜にかけて下肢痛が起こるといわれ、寝ているときに痛みで目が覚めてしまうという訴えもあります。痛みの度合いは個人差があるため、すべての成長痛が寝られないほどの激痛に襲われるわけではありません。
運動を控えて様子をみることも大切
夕方から夜にかけて起こる「下肢痛」は、必ずしも(いわゆる)成長痛(Growing Pains)とは限りません。
例えば学童期の子どもは、日中にたくさん走り回って活動することも多いため、夕方から夜間に筋肉が疲労して足の痛みやだるさ・不快感が現れやすくなっている可能性も考えられます。夕方から夜間帯だけ痛みを感じるようであれば、日中の活動量をセーブして様子を見ることも必要です。
スポーツ障害の可能性も考える
成長痛の時期や時間帯など、特徴的な部分を目安にする一方で、10代のスポーツ選手の下肢の痛み(膝の痛みや足の痛みなど)を周りの大人(この場合は親や医師)が「(いわゆる)成長痛(Growing Pains)」だと表現せずに、以下のようなスポーツ障害かもしれないという可能性も考えなければいけません。
- (骨端症として)膝のオスグッド病、踵のシーバー病
- 疲労骨折
- 外脛骨障害、三角骨障害
- 有痛性分裂膝蓋骨、離断性骨軟骨炎など
その他、スポーツ障害は多岐にわたる
原因がわからないときは整形外科医にご相談を
10代のスポーツ選手や部活に取り組む学生が「下肢が痛い」と訴えた場合、(いわゆる)成長痛(Growing Pains)なのかスポーツ障害なのか判断が難しいときや、その痛みが長く続く場合は、最寄りの整形外科を受診されてみてはいかがでしょうか。当院でもスポーツ整形外科に限らず、一般の整形外科外来でも受診できます。判断に迷うことや痛みに悩まれているときは一度、ご相談ください。
整形外科医 諸岡
参照:Lehman PJ, Carl RL. Growing Pains. Sports Health. 2017 Mar/Apr;9(2):132-138. doi: 10.1177/1941738117692533. Epub 2017 Feb 8.