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アスリハ通信

お家でチェック9:スポーツとエネルギー消費量

今年度は「おうちでチェックできる内容」を毎月のコラムで紹介していきます。第9回は「スポーツとエネルギー消費量」についてです。

スポーツとエネルギー消費量のおさらい

スポーツを行うと、日常生活と比べてエネルギー消費量は増加します。部活やレクリエーション、トップアスリートなど競技レベルに関係なく、日々の運動やトレーニングで「どの程度のエネルギー消費量があるのか」把握することは重要です。競技レベルのアップや食事量を検討する指標にもなりますので、ぜひ参考にしてください。

総エネルギー消費量について

睡眠時や歩くとき、座って仕事をしているときなど、あらゆる環境で私たちはエネルギーを必要とします。総エネルギー消費量は①安静時代謝量、②食事誘発性熱産生、③運動によるエネルギー消費量から構成されます。それぞれが占める割合は、一般の人と比較してスポーツ選手は③の運動によるエネルギー消費量が多くなります。これら3つの内容と、それぞれのエネルギー消費量を推定で求める計算方法についてご紹介します。

安静時代謝量

ヒトの臓器・組織におけるエネルギー消費量のことを言います。一般的に安静時代謝量はHarris-Benedictの式で求めることができます 1) 。

また、日本人スポーツ選手の平均安静時代謝量は除脂肪量1kgあたり27.5kgである 2.3) と報告されております。最近の体重計・体組成計では、体脂肪率や骨格筋量そして除脂肪量が計測できるものが売られているので、この方法でも安静代謝量を計算することができます。
除脂肪量65kgの場合:65g×27.5kcal=1787.5kcal

食事誘発性熱産生

食事をすることで身体では食物の消化、吸収および同化作用が行われます。さらに交感神経系も活性化されており、食事によってエネルギー消費量が増加することを食事誘発性熱産生と呼びます。
この数値は5大栄養素のバランスの取れた食事の場合、エネルギー摂取量の10%程度とされており 4) 、1日で2500kcalの食事を摂った場合は約250kcalが食事によってエネルギーが消費されていると考えられます。

運動によるエネルギー消費量

METs(Metabolic Equivalents)といった運動強度の単位があります。安静座位を1METsとして、酸素消費量を元にエネルギー消費量を計算されています。数値が高いほど強度の高い運動となり、METsとその運動の実施時間、体重を用いることでスポーツや運動でどの程度エネルギーを消費したか以下の式で求められます。また、代表的なスポーツ活動のMETsを表に記載しました。

運動時のエネルギー消費量(kcal)=体重(kg)×METs×時間(h)×1.05


※その他のMETsに関しては、国立健康・栄養研究所が出している“改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』がインターネットで検索もできますのでご参照ください。
例えば、体重75kgの人がウォーミングアップのストレッチを10分間、ランニングで軽いペース(1km10分)を20分と速いペース(1km5分)を上げたランニングを20分した場合は以下のようになります。

75kg×(0.6時間×2.3)+(0.33時間×6.0)+(0.33時間×12.3)×1.05=約1588kcal

目安となる総エネルギー消費量を知っておこう

上記の数字で算出した場合、①安静時代謝量②食事誘発性熱産生③運動によるエネルギー消費量で求めた数値を合計すると約3625kcalです。
競技や強度・年齢・性別・身長・体重によりますが、スポーツを行うとエネルギー消費量が多いことがわかります。この値よりも食事量(エネルギー摂取量)が不足しているとパフォーマンスの低下や、体重の減少に影響します。
手間はかかりますが、普段の運動やスポーツ量で「どの程度エネルギーを使っているか」を計算し、把握してはいかがでしょうか。

参考文献

  1. J Arrthur harris et al.:A Biometric Study of Human Basal Metabolism. Proc Natl Acad Sci
    USA. 1918 Dec;4(12):370-3.
  2. Taguchi M et al.:Resting energy expenditure can be assessed by fat-free mass in
    female athletes regardless of body size. J Nurt Sci Vitaminol(Tokyo),57:22-29,2011.
  3. Oshima S et al.:Fat-free mass can be utilized to assess resting energy expenditure for
    male athletes of body size. J Nutr Sci Vitaminol(Tokyo),57:394-400,2011.
  4. Silva AM et al.:Compensatory changes in energy balance regulation over one athletic
    season.Med Sci Sports Exerc,49;1229-1235,2017.
  5. Ainsworth BE et al.:2011 Compendium of Physical activities : A Second Update of
    Codes and MET Values. Med Sci Sports Exerc,43:1575-1581,2011.
  6. (独)国立健康・栄養研究所:改訂版『身体活動のメッツ(METs)表』.2012