運動と喫煙
今回は「喫煙と運動」についてです。スポーツ選手のなかには、喫煙・禁煙に関してさまざまな意見があると思いますが、現時点でわかっている「喫煙と身体の反応・運動能力」についてご紹介します。
喫煙することで起こる影響…
持久力低下
酸素は血液中のヘモグロビン(Hb)と結びつくことで全身に運ばれます。たばこに含まれる一酸化炭素(CO)は酸素に比べて200~250倍ヘモグロビンと結びつきやすく、一度結びつくと数日間は離れません。たばこを吸うと、体内にある一酸化炭素が酸素が結びつくはずのヘモグロビン量が減らし、全身に運ばれる酸素量が減少させてしまいます。これが、持久力低下につながります。1日の喫煙本数が多い人ほど12分間で走れる距離が280m短いという報告もあります。
筋力・瞬発力低下
たばこ製品に含まれるニコチンには、脳や神経の興奮作用があります。継続的に喫煙をしていると、ニコチンがないと神経が興奮しにくい身体となり筋力や瞬発力の低下が起きると考えられています。
集中力低下
たばこを吸うと肺からニコチンが取り込まれ、中枢神経に作用し、血中のニコチン濃度が上昇して快感を生み出します。ニコチン濃度が一定値を下回るとイライラ・不快感を覚え、集中力の低下につながります。不快な症状が消失するため、喫煙を続けてしまい「ニコチン依存症」が起こります。
ケガのリスク・回復力低下
靭帯・腱・軟骨・骨の主構成物質であるコラーゲン形成にはビタミンCが必要です。喫煙すると、たばこ1本につき体内のビタミンCが約25mg消耗されるため、喫煙がコラーゲン形成を阻害し、ケガをしやすい身体をつくってしまいます。また、血管収縮作用により血流量が減少し、必要な栄養が供給されにくくなるため組織の修復・回復が遅くなるともいわれています。
喫煙は呼吸器官にも影響が大きい…
「運動をしてもすぐに疲れてしまう」「充分に力が発揮できない」「咄嗟の判断が遅れる」「ケガをしやすいリスクが上がる」などの喫煙の影響は多数あります。ほかにも、喫煙者は持久力低下や新型コロナウイルス感染症のような呼吸器感染症が重症化しやすくなる可能性があるとも言われています。今後、運動を続けていくうえでも、健康に長生きするためにも禁煙をご検討ください。
- 鈴木立紀:スポーツと喫煙.理大科学フォーラム.2020.3(3).2-3
- 東山明子:アスリートへの禁煙支援.禁煙科学.2007.1(3).4-7