「味覚」とは?
おいしい感覚のおさらい!
「味覚の秋」という言葉があるように、この季節は、おいしい食材が豊富で食べる楽しみが大きいと言われています。その味覚は、「甘味・酸味・塩味・苦味・うま味」の5つの基本味から構成されています。今回は、この味覚についてご紹介します。
基本の五味について
甘味
甘味は、砂糖だけでなくアルコールやアミノ酸でも感じます。甘味は体温に近い35℃付近で最も甘味を強く感じ、温度が高くまたは低くなるほど感じにくくなると言われています。溶けたアイスを食べてより甘く感じたり、ゼリー状よりも液状の方が甘さを強く感じるのは、この甘味の仕組みが作用しているためです。
酸味
酸味は、酢酸(食酢)やクエン酸(柑橘類)、酒石酸(ぶどう)などで感じます。
酸味には、消化液の分泌を促して食欲を刺激する役割や減塩による味の物足りなさを補うことにも役立ちます。
塩味
ひとがおいしいと感じる食塩濃度は、生物学上のヒトの体液の浸透圧に近い約0.85%と言われています。また、塩味は温度が低くなることで塩味を強く感じると言われています。例えば、お弁当の卵焼きを食べたとき、「作りたて」はちょっと物足りないかな?と思っていても、「お弁当を食べるころ」には丁度いい塩加減になっているのは、この温度が低くなる=塩味を強く感じる作用が働いているためです。
苦味
さまざまな食品に含まれている苦味は、本能的に警戒心を伴う味とされており、ごく少量でも「苦味」を感じます。コーヒーに含まれている「カフェイン」やお茶に含まれる「タンニン」という苦味成分を耳にしたことがあるかと思います。一方でニガウリに含まれている「ククルビタシン」という苦味成分は、実はきゅうりにも含まれています。苦味が強すぎる場合は、ククルビタシン類を多く含む可能性がありますので、食べないようにしましょう。
うま味
うま味には、こんぶやトマトに含まれる「グルタミン酸ナトリウム」などアミノ酸系の成分と、かつお節に含まれる「イノシン酸」やしいたけに含まれる「グアニル酸」などの核酸系の成分があります。「テアニン」といわれるうま味成分は緑茶に含まれています。
辛味や渋味、えぐみ、金属の味なども「味」とついていますが、これらは、自由神経終末で感じる刺激なので基本味とは感じ方が異なります。例えば、辛味は痛覚と温度覚で感じるので厳密に言えば味ではないのです。また、味覚の組み合わせによって、さまざまな効果が生まれます。
そのほかの作用
相乗効果
同じ味を持つ2つ以上の呈味物質を混合したときに、互いに味を強める現象をいいます。「昆布だし」と「かつおだし」の組み合わせは、とても有名です。また、うま味だけでなく甘味も相乗効果を使ったものがあります。例えば、「アスパルテーム」と「アセスルファムカリウム」を合わせることで強い甘味に増強することができます。砂糖不使用の甘いお菓子に使われている成分なので、お買い物の時に成分表示を見て探してみましょう。
対比効果
異なる味を混合したときに、一方の味が増強される現象をいいます。
「すいか+塩」や「あんこ+塩」などのように甘いものに塩味を加えることで甘味を増強させることができます。
抑制効果
異なる味を混合したときに、味が弱められる現象をいいます。
コーヒーに砂糖をいれて苦味を和らげることも抑制効果のひとつです。ほかにも、醤油の塩分濃度は、約16%と海水よりも高い塩分濃度ですが、塩味だけではなく「うま味」や「甘味」「苦味」「酸味」の要素が加わることで塩味を和らげていると言われています。
変調効果
2種類の違う味を続けて食べると後に食べた味が変わってしまう現象をいいます。
ビュッフェでフルーツとケーキを取ってきて、ケーキを食べてからフルーツを食べたらフルーツの酸味を強く感じた経験がある人も多いのではないでしょうか。塩味の強いものを食べた後に水を飲むと水が甘く感じられたりするのも変調効果のひとつです。
今回お話した味覚の組み合わせは、当たり前にしてきたことばかりだと思います。食事の際や料理をする時に「これは相乗効果だ」、「抑制効果だ」などと思い出してみると違った視点で食事を味わってみてはいかがでしょうか。
引用)日本味覚協会
栄養部 管理栄養士