整形外科 Orthopaedics

前十字靱帯損傷

前十字靭帯

前十字靭帯は膝の中央を走る「太ももの骨(大腿骨)」と「すねの骨(脛骨)」をつないでいる靭帯のことをいいます。 この靭帯は、一度損傷すると自然に治ることが難しく、ぐらつき(不安定性)が残りやすいため手術を行うことが多いです。

ケガを起こしやすい状況

膝前十字靭帯損傷は、スポーツ外傷や交通事故などで大きな力が膝に加わったときに起こりやすいケガです。「ブチッ」という断裂音を感じたあとに、激しい痛みや腫れを感じるようになりますが、ケガをしてから数日経過すると、痛みや腫れが落ち着き、数週間後には膝の不安定感があっても歩けてしまうことから見落とされやすいケガのひとつです。

原因

スポーツ外傷や交通事故などで大きな力が膝に加わったときに起こりやすく、なかでもバスケットボールやサッカー、スキーなどでのジャンプの着地や急な方向転換をしたときや、相手との接触によってケガをする場合もあります。非常に強い外力を受けたときは、複数の靱帯を一度に損傷する場合もあります。一度損傷すると自然治癒の可能性が非常に低く、膝が「ガクっ」となる膝くずれを起こすことで「変形性膝関節症」になりやすくなってしまいます。また、適切な治療を受けずに放置すると、半月板損傷や軟骨損傷を引き起こし、慢性的な痛みや腫れが出現する可能性があります。

治療

前十字靭帯の治療法は、「保存療法」と「手術療法」のふたつがあります。中高齢の患者さんの場合には保存療法が選択されることもありますが、保存的な治療だけでは前十字靭帯の機能回復は期待できないため、特にスポーツに復帰される予定のある方や関節の機能が低下し、痛みや変形が残るため手術することを推奨しています。

関節鏡(内視鏡)による手術のイメージ

手術

手術は「関節鏡」という内視鏡を使って行います。
前十字靱帯を再建するために、もも裏の筋肉(ハムストリング)やお皿の下の腱(膝蓋腱しつがいけん)などから腱を採取します。
手術器械を入れるための傷を含め1cm程度の傷が3〜5ヵ所必要になります。また靱帯再建のために腱を採取する傷ができます。手術中に関節のなかを細かく観察し、治りづらい半月板損傷や軟骨損傷などがあれば一緒に対応します。

手術後のリハビリ

前十字靭帯再建は、術後1週間ほどはサポーター固定を行い、その後から松葉杖を使用して部分的に体重をかけていきます。術後2週間ほどで松葉杖をせずに歩いて退院されることが多いです。
その後は、通院リハビリテーションを行い、術後1ヵ月を過ぎた頃から全体重をかけた歩行訓練、3〜4ヵ月後には軽いジョギング、6〜7ヵ月から実際に行うスポーツに必要な動作を開始し、術後8ヵ月前後にスポーツ復帰となることが多いです。

半月板損傷

半月板の構造

半月板は「すねの骨(脛骨)」の表面を覆う軟骨組織で三日月の形をしていて、膝関節を安定させる役割や膝にかかる衝撃をクッションのように吸収して分散させる役割があります。半月板は「内側半月板」と「外側半月板」のふたつがあります。

ケガを起こしやすい状況

半月板損傷は、スポーツ外傷から起こる場合と、加齢により傷つきやすくなっている半月板に何らかの力が加わって損傷する場合があります。スポーツ外傷で起こる場合は、体重が加わった状態でのひねりや衝撃によって前十字靱帯損傷などと合併して起こる可能性が高い傾向があります。

原因

半月板損傷は、膝に強い衝撃がかかったときや異常な状態で膝関節がねじれたときなどに損傷します。スポーツ外傷で起こる場合は、前十字靱帯損傷などと合併して起こる可能性が高い傾向があります。
加齢によって起こる場合は、変形性膝関節症に伴って内側半月板損傷が起きる傾向にあります。

治療

半月板損傷の治療は前十字靭帯の治療法と同じように、「保存療法」と「手術療法」のふたつがあります。膝にかかる衝撃をクッションのように吸収できる機能が大きく落ちていない損傷状態であれば、まずは保存療法となるリハビリテーションの治療を開始します。軽症であれば、保存療法で良くなりますが症状が改善しない場合や重症の場合は手術療法を行います。

関節鏡(内視鏡)による手術のイメージ

手術

手術は前十字靱帯の手術同様、「関節鏡」という内視鏡を使って行います。関節鏡(内視鏡)の手術器械を入れるための小さな傷が3つほど必要になります。膝の内側と外側に4cmほどの切り傷が必要です。
手術器械を入れるための傷を含め1cm程度の傷が3〜5ヵ所必要になります。また手術中に関節のなかを細かく観察し、治りづらい軟骨損傷などがあれば一緒に対応します。

手術後のリハビリ

半月板損傷の術後リハビリテーションは、損傷した半月板が内側・外側、切除または縫合部位・範囲によって異なります。また軟骨損傷を伴っている場合には、別途のリハビリテーションが必要となるため、リハビリテーションの程度は異なります。一般的に安全な範囲で膝関節を動かし、可動域を回復させるリハビリテーションが中心となります。術後3〜4カ月ほどで軽いジョギングなどが可能になります。

変形性膝関節症

正常な膝(上)と、関節軟骨、半月板がすり減って変形した膝(下)

こんな症状から始まります

「歩きはじめの一歩が痛い」「正座がつらくなった」「階段昇降が不安」など動作の開始時に強く痛みを感じることが多く、少し休めば痛みがとれる傾向があります。進行すると、正座や階段昇降が困難になったり、安静時や夜間にも痛むようになります。また、変形が目立ち、膝がピンと伸びず歩行が困難になります。

変形性膝関節症の進行イメージ

原因

主な要因は、大きく分けて2つあります。
ひとつは炎症によるものです。長年、膝に負担がかかり続けたことで軟骨が少しずつすり減って摩耗し、関節内の滑膜かつまくに炎症が起きるため膝が痛いと感じるようになります。
もうひとつは損傷によるものです。膝に体重がかかり、物理的に損傷が起こることで痛みを感じます。この両方が合わさって疾患を引き起こす、あるいは炎症性の関節リウマチから変形性膝関節症になる場合もあります。最初は軽い症状でも膝の損傷と重なったことで悪化する場合も少なくありません。

治療

半月板損傷の治療は前十字靭帯の治療法と同じように、「保存療法」と「手術療法」のふたつがあります。膝にかかる衝撃をクッションのように吸収できる機能が大きく落ちていない損傷状態であれば、まずは保存療法となるリハビリテーションの治療を開始します。軽症であれば、保存療法で良くなりますが症状が改善しない場合や重症の場合は手術療法を行います。

変形性膝関節症になりやすい状態とは?
女性

明確な要因は解明されていませんが、女性は男性よりも筋肉量が少なく、閉経に伴う女性ホルモンの減少で、少ない筋肉量がさらに減少します。そのため、膝関節の衝撃を吸収力などが低下しやすくなってしまいます。

膝のケガをした経験がある

スポーツなどで膝靱帯や半月板を損傷した際に適切な治療を受けられていない場合は、変形性膝関節症を発症する可能性が高くなるといわれています。そのためスポーツなどのケガでも早期治療が求められています。

肥満・不摂生

若年層や筋力のある男性などの要因として多いものは肥満です。膝は常に体重を支えているため、体重が重いほど膝への負担が大きくなります。また、乱れた生活習慣も免疫力の低下や筋力が衰えにつながるため膝にかかる負担が強くなります。

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